PIDとは、温度などを制御する時に、より正確に設定温度に測定温度が一致するように工夫された制御方式のことです。
測定温度が比例帯と言う温度帯に入ると、比例制御が始まります。測定温度が比例帯のどの位置にいるかによって、温調出力を出します。
比例帯は、その温調計のフルスケール(0〜150℃なら150℃)に対する%で設定します。
設定温度の上下に比例帯による温度幅を設けます。比例帯が大きいと、ゆっくりした制御になり、小さいと敏感な制御になり温度がハンチングします。
いつまでたっても設定温度と測定温度に温度差がある時に、積分制御によりその温度差を補正するように温調出力を修正します。
積分時間は、秒で設定します。秒の意味は複雑ですので、説明は省きます。
積分時間が大きいと、積分動作はゆるくなり、小さいと強くなります。強いと温度はハンチングします。
もし、急激に温度が変化すると、微分制御により、早く設定温度になるように温調出力を修正します。
微分時間は、秒で設定します。秒の意味は複雑ですので、説明は省きます。
微分時間が大きいと、微分動作は強くなり、小さいと弱くなります。強いと温度はハンチングします。
一般に染色機の温調では、0秒に設定し微分制御をかけないことが多いようです。
Pは比例制御での比例帯、Iは積分制御での積分時間、Dは微分制御での微分時間のことです。
温度制御がうまくいくように、これらの値を調整する必要があります。
染色機の大きさや液量、投入生地(糸)の量、蒸気圧、バルブ動作の特性、温度帯、など様々な要因によってPIDの値を変える必要がありますが、染色機の場合は、1つのPID設定で全ての運転に対応しているのが現状です。
PIDの調整には、PIDの理解と、調整の経験が必要ですが、普通の温調計で行う一定温度の制御はPIDのオートチューニング機能が有効です。
しかし、染色機のように温度をプログラム制御している機械は、オートチューニングに向いていません。
PIDの考え方を車の運転で例えてみます。
時速100キロで走行したい時に、遅ければアクセルを踏むし、早ければアクセルをゆるめる。
この動作が比例制御です。つまり、現在の速度に応じてアクセルを操作することです。
更に詳しく言えば、アクセルを50%踏んだ時の速度が時速100キロだとします。
100キロで走る時は、アクセル50%。
90キロで走る時は45%。
105キロで走る時は105%。
このように、比例制御では、あらかじめ速度とアクセル位置の関係を決めておきます。
そして、希望する速度で運転するためには、あらかじめその速度に対して決められたアクセル位置とします。
しかし、アクセル50%で100キロと決めていても、登り坂、下り坂、乗車人数などにより、100キロを維持することは困難です。
登り坂でアクセル50%を維持すると、80キロに落ち着いたとします。
この時の-20キロをオフセットと呼び、比例制御のみでは必ず生じる誤差です。
積分制御はこのオフセットを解消するためのものです。
登り坂になると速度が少しずつ落ちてきます。そこで少しアクセルを踏みます。
まだ速度が落ちる場合は、更にアクセルを踏みます。
このようにアクセルを踏んでみて、その結果速度が上がらないと、少しずつアクセルを踏み増します。
いずれ速度が上昇に変化して100キロになります。
そして100キロを超えると、今度はすこしずつアクセルをゆるめて100キロにします。
したがって、積分制御は、現在の速度差に対してアクセルを踏み、その結果の速度を見て、再度アクセル操作するものです。
ブレーキを踏んで速度が急に落ちたとします。この時、人間はアクセルをグッと踏み込んで、100キロに戻そうとします。
このように、急な変化に対して早く元に戻そうとすることを微分制御と言います。
つまり、人間は知らないうちにPID制御をして運転をしていることになります。しかもPIDの調整は瞬時に行っています。
現在、車の一定速度運転スイッチがありますが、人間にはとてもかないません!
PIDを、学生さんが就活をする時の、会社の評価に例えてみます。
現在の会社の大きさ(規模)を比較して評価します。
単純に大きい会社を高く評価し、小さい会社を低く評価するとします。
評価は会社の大きさに比例して決まります。
過去、どのような推移で現在に至ったかで評価します。
現在、売り上げが10億円でも、10年前からどんどん上がってきたのか、また下がり続けてきたのかを評価します。
近々の業績の動向で評価します。
つまり、今この会社は勢いがあるのか、衰退傾向なのかを評価します。
なんとなく分かって頂けたでしょうか?
(今年は娘が就活で、あちらこちらを飛び回っています。頑張って欲しいものです。)
結論から言えば、PIDの調整は専門家でないとできません。
特に、温度をプログラム制御している染色機の調整は、更に困難です。
そこで、簡単な調整の考え方のみを記します。
通常の染色機で使われている値は以下のようです。
メーカーの出荷値がほとんどの染色機でそのまま使われています。
弊社のプロコンに交換した場合は、試運転時に調整します。
ほとんどのケースは蒸気不足ですので、PIDでは調整できません。
Pを小さくします。最大1%まで小さくしてもかまいません。
Pを小さくした時は、Dを大きくします。最大30秒までOKです。
それでもオーバーシュートが気になる時は、Iを増やします。最大15秒までOKです。
これは染色機特有の調整で、一般的な機械には適用できません。
それでも原理が分からずにPIDをさわるのは怖いようでしたら、弊社にご相談下さい。
染色機によっては調整困難な機械もあります(電磁弁がONしてからバルブ開までにかなり時間がかかるような染色機)。
プロコンの制御出力(加熱弁や冷却弁を動作させるもの)が、0%の時は加熱弁は閉、100%の時は加熱弁は開となります。
それでは30%の時、加熱弁はどうなるのでしょう?
染色機でまれに使われる連続弁では、エアーの圧力を30%にして、バルブ開度を30%にします。
ところが、染色機で一般的に使われているシリンダー弁やダイアフラム弁はON/OFFタイプで、全開と全閉しかありません。途中の位置で止めることは困難です。
そこで、周期と呼ばれる時間を設定します。
例えば、周期10秒の場合、プロコン制御出力30%の時には、3秒間開で7秒間閉となります。
このように、周期の設定時間を分割して、その出力%に応じた開閉時間にしています。
染色機の比例周期は8〜15秒で、一般的には10秒が多いようです。
比例周期を遅くすると、
例えば、15秒とすると、30%の時に4.5秒間加熱弁が開し、10.5秒間閉します。
4.5秒間で温度がかなり上昇し、10.5秒間でかなり下降します。
したがって、温度むらが出やすくなります。
比例周期を早くすると、
例えば、5秒とすると、30%の時に1.5秒間加熱弁が開し、3.5秒間閉します。
ところが、実際には電磁弁とバルブの距離があり、このエアー配管内の体積が影響して、1.5秒間電磁弁がONしても、バルブはあまり動作できません。
また、頻繁なON/OFFは電磁弁や盤内のリレーの寿命を早めるだけでなく、エアー損失も多くなってしまいます。
しかし、ある会社では、バルブのエアー入り口に直接電磁弁を接続し、比例周期5秒で運転しています。
寿命やエアー損はありますが、正確に温度制御ができます。
弊社では、染色機の比例周期は10秒が最適と考えております。
染色機用プロコン 株式会社デバイス
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